「自然と人間」をめぐる生命をみつめる対話!Eテレ「SWITCHインタビュー達人達 上橋菜穂子×齊藤慶輔」 | おうちエンジョイライブラリー   

2016年4月6日

「自然と人間」をめぐる生命をみつめる対話!Eテレ「SWITCHインタビュー達人達 上橋菜穂子×齊藤慶輔」

2016年3月26日(土)午後10:00~11:00 【Eテレ】 SWITCHインタビュー 達人達(たち)「上橋菜穂子×齊藤慶輔」。

NHKドラマ「精霊の守り人」の原作者の上橋菜穂子さんと、上橋さんの作品『獣の奏者』の監修者の1人で野生動物専門の獣医師・齊藤慶輔さんの対談でした。



上橋さんが齊藤慶輔さんを今回の対談相手に指名したのは、
齊藤慶輔さんが、人以外の世界と人の世界との間を行ったり来たりしながらものを考える人で、そういう人に出会ってみたいという理由から。
そして、イケメンというのも大きな理由(笑)

齊藤さんは30歳以降北海道で野生の鳥の保護をしながら獣医師のお仕事をされています。

上橋さんはアボリジニの研究をする文化人類学者で、その傍らファンタジー小説を執筆。
「精霊の守り人」を含む「守り人」シリーズはベストセラーとなり、2014年国際アンデルセン賞作家賞を受賞、最新作の「鹿の王」は本屋大賞を受賞しています。





(イメージ)

番組前半は、齊藤さんの野生動物の診療所を上橋さんが訪ねての対談。

診療所に来る、オジロワシ等の動物たちは、列車事故など人間の世界との軋轢で傷を負う場合が多い。

齊藤さんはその動物が自分の意志で動こうとする気力があるかどうかを見る。
野生に帰れるのは4割ほど。
診療所の裏には猛禽類用のリハビリのケージがある。

野生動物の心の中を知るには、野生動物が発しているシグナルをとらえること。
声だけでなくしぐさちょっとした身振り、ノンバーバルコミュニケーションが重要。

猛禽類は痛みをガマンしてしまうので、診察では傷を触って鳥の顔を診る。
ガマンとは、鳥は痛みの代償行動で、口をモグモグさせて何かを食べているようなしぐさをすることがある。

動物と関わる際、動物にメッセージを伝えなくてはいけない場面がある。
例えば、「動くなよ」と伝える際は、
始めは鳥の脚等をゆっくりやわらかく持って、相手がちょっとでも動いたらギュと持つことで、「動いたらつかまれる」=「動くな」というメッセージを伝えている。

動物に伝える手段として、「目ヂカラ」も重要!
気迫、気持ちで猛禽類を抑え込むことも。
常に抑え込むのでなく、「ここ!」と思うところでギュッと伝える。
ボディランゲージがすごく重要。

齊藤さんと上橋さんの共通点に、古武道経験者という意外な点があった。
野生動物と接する際、解剖学的な知識も必要だが、古武道のちょっとした関節技も役立っている。

野生動物専門の獣医師はとても珍しいため、治療法などを一から見つけ出して開発しなければならない。
診察用の手袋など道具も齊藤さんが開発した。
手袋は、指先に継ぎ目がないため触診が可能で、手首がすごく太いサイズでつくってあるのは猛禽類に万が一つかまれたとき脱げるように。また、洗って干せば元の状態に戻る。

齊藤さんは事故などで運ばれてくる野生動物の緊急手術を年間約100回は行っている。

臨床家は常に向上心を持ち、向上し続けなければならないとする齊藤さんの考え方は、大変厳しいものでした。
「あの技術、あの薬があれば助けられたのに」と思い続けること。
「『やるだけやった』と思う瞬間があったら、(野生動物の獣医師は)やめたほうがいい」
動物たちの死に直面することもある仕事だが、「甘んじて背負って行かなければと思っている」

野生動物たちの事故の原因究明と予防策を実施することにも、齊藤さんは尽力されています。

感電事故を防ぐため、ワシが嫌いな色を北海道の鉄塔に設置。これは電力会社の理解あってのこと。

フクロウがエサとなるカエルを追って車に轢かれる事故が発生する場所では、国土交通省に依頼し、事故現場手前の道にスリップ防止用のみぞをつけて、走ってくる車の音にフクロウが気づき逃げられるようにした。

1990年代後半からオオワシやオジロワシの大量死が起こったが、原因は狩猟に使われる鉛の銃弾を被弾したエゾシカなどの肉ごと飲み込んで起こる鉛の中毒死。
2004年までに北海道では鉛弾の使用禁止となったはずだが、猛禽類の鉛中毒死は続いている。

この問題点は、強いものから死ぬという自然のルールに反していること。
生態系のピラミッドの頂点にいる、優秀な遺伝子をもつ強い猛禽類などの個体が、毒で死んでしまい遺伝子を残せないことは種の存続に関わる重大な問題。

また、風力発電のブレードにあたって40羽以上のワシが死んでいる。

ほとんどすべてのワシが上から降りてきたブレードのチョップで切られている。
風力発電のブレードはあまりにも大きなもののため、ワシには全体が見えていない。
そしてワシは飛翔中、前を見ながらも下を見ることはしているが、上に注意を向けることはしないため。

人間と野生動物との軋轢をなんとか解消して、将来、風力エネルギーを安全に使えるようにする、
できるだけ早く共生できる道を探す活動を齊藤さんらは行っている。

上橋さんの作品『獣の奏者』の監修者

上橋さんの作品を監修した時、齊藤さんはフィールドワーク中で野宿しながらゲラを読んでいた。

齊藤さんが詳細にチェックした原稿を読んで上橋さんは、
「1つのことから発して 網の目が広がっていく」
「いろいろなことが連想して思い起こされてくる」
「読んでいるだけでエキサイティング」と語る。

上橋さんが『獣の奏者』の作品中、獣医のような存在の登場人物の独白で、獣医として動物と接することについて「これでよかったのかな」と思う表現があり、実際に獣医師をしている齊藤さんに確認。

齊藤さんは獣医の仕事について、
「動物があるべきところで生活をして、あるべき生き方をして、命を全うすることがとても重要で、それに導いてあげること」が獣医の仕事ではないかと応えた。

齊藤さんは犬や猫など小動物の臨床家の仕事をはじめとして、野生動物・コンパニオンアニマル・産業動物などに接してきたが、それぞれに違った生き様がある。

人間である自分も生態系の一員で野生動物であり、人間が動物を”治してあげる”という考え方はおかしい。

人間とは不思議な生き物で、他者が傷んでいるとかわいそうだと思う。
猛禽類だと、弱った動物がいたら「しめた」と思う(笑)
弱った動物を治すことは、弱肉強食の生態系ピラミッドが崩れてしまう。

人間は今、文明という強大な力をもつことで、生態系ピラミッドをぶっこわす存在になってしまった。
本来なら自分の敵となる存在に対して、生物は進化で対応するが、もはや追いつかない。

地球は生命体であるというガイア理論によれば、病気が生物の体内に入ったときに抗体がはたらくように、
地球の自然が壊れそうになれば、止めようとする力がどこかで働くだろう。
齊藤さん自身が白血球の一粒になったら、とてもハッピーな人生。

(イメージ)


番組後半は場所を替え、上橋菜穂子さんの書斎へ齊藤慶輔さんが訪問しての対談。

「精霊の守り人」は「違う生態系」の2つの世界が出会ったら?という物語でもある。
自然界では、カッコウの托卵など、他の生物に寄生する生き物も多い。
これにヒントを得て、托卵された男の子が
それをされるとまずい人間だったら?
わが子をその父親はどうするだろう?
といった思考を重ねていくことで作品が執筆された。

「精霊の守り人」はプロットを立てないで書かれたが、執筆中はバルサの声や体温を上橋さんは感じていた。
後でゲラを読むと、「誰書いたんだろう?これ」と他人の感覚になってしまうそう。
上橋さんはイメージが降りて来ないと作品が書けないそうです・・・。

齊藤さんは上橋さんの作品を読み、バルサなどの登場人物が、自分の運命だからと大変な状況をさらりと受け入れたり、理屈抜きに手をさしのべるのはどのような思いで書かれているのか?と質問する。

上橋さん「私が書く人はみんなそれ」(笑)
諦めたり引いた方がよい状況で、半歩出てしまわざるえない人間を書いてしまう。
他の選択ができず、やらざるをえなくなっている人間は悲しい面もあるが、
やらずにいられない人がかっこいいと思ってしまっているのだろうと自己分析。

バルサなど、一所懸命道を探して歩いている登場人物たちは、斎藤先生的ですね(笑)と上橋さん。

また、作中に登場する美味しそうな食べ物の話題になると、上橋さんは
食べたいものを書いている、
住みたい世界を書いている、と。
異世界なのに生活のにおいがあるのはそういった姿勢が表れている。

上橋さんはバルサが一番好きでなりたかった自分だそう。

上橋さんは1人の音声の世界を書くのが苦手で、文化人類学者としての研究は多音声の世界を書くのに役立っている。
例えば、狩猟採集の経験。
カンガルーの皮むきを見たり、カンガルーのしっぽが一番おいしいと教わったり(笑)という話も。

相手を理解するところから始めないと共生は難しい
いかに人間が自分の文化から離れることが難しい

上橋さんはファンタジーを書きたくて書いているのではなく、
「鳥の視点がほしい」と。

「鹿の王」は命と病(やまい)の本質を描いた作品。

実は上橋さんが更年期障害を経験して、コレステロールが気になったりして、着想を得たらしい・・・。

さらに対談のテーマは
生物の世界は情の無い世界、人間は情の世界で成り立っていて、
人間は身体の上に心がのっかっている状態だが、
今後、再生医療など医療の発達でからだとこころが別になったら・・・
と、大きく広がっていき、最後は疑問符でしめくくることとなりました。

「人類とはどこに行こうとしているんだろう?」


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